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『日本の絵』 2005年 和紙、金箔、墨、胡粉、アクリル、金属粉 200×200㎝ 文化庁蔵

「類のない個我の意識」

 方形のパネルのまわりには余白があり、その下部に鉛筆で作品名、制作年、日時が書き添えられている。サインは西洋式に筆記体である。画中には意匠化された山々が描かれている。さらに細部を観察すれば、その山間には家、庭、寺院などの建物、電柱や電波、川や滝、雨雲や風雲、ハンググライダーに乗る人、飛行機、観音様が雑多ながら自在な筆致で描かれている。

 金地で覆われた空には星が瞬いている。現代版絵地図といった様相である。描くテーマは意外にも身近にある。作品は「奈良に住んで得た、日本のイメージを描いている」のだという。さらには「画材に導かれながらの制作を進めている」と。紙を継ぎ足しながら、連鎖的なイメージの広がりをみせるその創作を、たえず変貌しつづける現実世界を見据えた取り組みとみる美術評論家もいる。

 筆者は本作を紹介するにあたり、日本美術から、山を描いた作品図版をいくつか比較参照してみたが、本作には他に類のない、個我の意識が宿っているように思われた。また、造形的な気迫の強烈さにおいても本展出品作中、際立っているとみている。会場ではもう1点、この作家の「奇景」と題する力作を見ることができる。

 作者三瀬夏之介は1973年奈良県生まれ。2002年の「星野眞吾賞展」で大賞受賞。05年「日本画ジャック」展に出品。また今年、東京都現代美術館での「MOTアニュアル2006 No Border—『日本画』から/『日本画』へ」展に出品。斬新な作風にはますます磨きがかかっている。

砺波市美術館学芸員 末永忠宏

(2006年7月29日  読売新聞)

「描く奇跡」

ものが描けなくなった時期が数年あった。阪神淡路大震災があった12年前の頃。画面の中に具体的なものを描くこと、いや線一本引くことさえ暴力的に感じられ、身動きがとれなくなった私はいつしか水や錆といった自然の作用に色や形の決定を任せるしかなかった。自己決定をさけた制作はそれからさらに数年程続いたか。錆の発色や水のにじみ、ぼかしとのコラボレーションにより、大きな言葉を得れたと自足していたのもつかのま、このままでは何も言っていないのではないか?抽象では何も解決されていないのではないか?と思い至った。そこで久しぶりに手に招かれるように描いたものは「山」だった。いや正確に言うと「山の稜線」だった。平面としか呼ぶことのできない、だらしなく白い支持体に山の稜線を引くことによって、そこには奇跡が起こる。山はのたうちまわり、生成して消滅する。背景は永遠の奥行きを示したり、支持体そのものの物質性を露にしたりと激しく明滅する。

実生活からの影響、時代の流行り、ユーザーからの希望など、ある作家の作品が動く要素は様々だが、私はこの基本的な絵における奇跡と格闘していくことを第一に考えなくてはいけないのだと考えている。

三瀬夏之介(絵描き)

Miracle of Painting

There was a time when I could not paint anything. About twelve years ago when the Great Hanshin-Awaji Earthquake occurred. I felt it was violent to draw something specific, or even to draw a line. Feeling stuck, I let the working of nature such as water and rust to decide colors and shapes. Such style of production without self-determination continued for a couple of years. . 
While I felt with satisfaction that I was speaking something important by combining the appearance of rust and a blur and gradation of water, it wasn’t long before I realized that Iユm not saying anything. Abstraction has not solved anything. 
I then started to draw mountains as if invited. Lines of mountains, to be exact. Miracles occur by drawing lines of mountains on an obscure white frame that can only be called a plane surface. Mountains wriggle, come into existence, and disappear. A background flashes with an intensity by indicating an eternal depth, or dews the materiality of the frame itself. 
Works of an artist are inspired by various elements, such as events in real life, the trend, users requests, etc. But first and foremost I have to fight with the miracles of painting.


Mise Natsunosuke (painter)

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