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『君主論 Il Principe』 @gallery neutron

photographed by OMOTE Nobutada

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御存知の方も多いと思うが、三瀬夏之介は今年の春から1年間、イタリアのフィレンツェに留学中である。しかし岡山の大原美術館、名古屋の中京大学での企画展に合わせて一時帰国 するこの時期、毎年恒例のニュートロンでの個展にも挑もうと言うのだから、やはりこの男は 見上げたものである。

なぜロンドンでもパリでもなくフィレンツェなのかは、実に彼らしい理由に拠る。彼の地元である奈良は度々自身の口からも登場するように、古くからの歴史と退屈な現代的日常が同居する土地柄であり、それは彼にとってフラストレーションと制作へのモチベーション(動機付け)を同時に掻き立てる存在でもある。そういった背景からか、常に彼の制作の根本には「新しいもの」と「古いもの」、あるいは「創造的なもの」と「破壊的なもの」と言う ような対極に位置する要素が見られる。それらが少年の夢の中の世界のように広がる三瀬ワールドで展開される様は、むしろ奈良を初めとするローカルな一地点を連想させるに留まらず、あるいは「日本」という国に縛り付けることもなく、土着と新興の存在しうる世界の各地において響き合う架空の世界、と認識することも充分可能ではないか。だからこそ彼は、敢えて自らをファッションやトレンドの地ではなく歴史と創造の街・フィレンツェへと赴かせ、きっと自らの制作へのエネルギーを日々吸収し発散しているに違い無い。

浦沢直樹という漫画家の人気作に「20世紀少年」というものがある。ちょうど私と三瀬が同い年(1973年生まれ)なのだが、その団塊ジュニア世代を虜にして止まないストーリーはファミコン、塾通い、少年ジャンプにバブル崩壊、そしてオウムと阪神淡路大震災を経て9.11に至る私達の世界観を見事に映し出し、人間の脆弱さと傲慢さをあぶり出し、一方で作品としてはエンターテイメントと文学性を兼ね備えている(百分は一見に如かずなので未読の方にはオススメしておきます)。翻って三瀬の描き出すその世界も、やはり私達が見て、感じて経験してきた全てのものたちに目を背けることなく、まるで今でも彼は少年であるかの様にイメージ豊かに描かれている。彼の作品はおよそ「日本画」(西洋画に対する)の文脈で語られる事が多いが、同年代の私達にとっては単純に、「他人事では無い」世界観が描かれているのだから、彼の描くリアルな絵空事に夢中になるのは理屈抜きで当然のことだ。

さて、そんな彼もいよいよ世界への飛躍を遂げようとしている今、この発表と来年5月に予定している新作展(「KYOTO ART MAP 2008」参加企画)はまさに、三瀬にとってもニュートロンにとってもエポックメイキングな出来事となるのは間違い無いだろう。

イタリアからのメールにもその気概が存分に表れており、彼に寄り添う「日本画」のイメージをどう打ち壊し、また築いていこうとするのか、興味は尽きない。

私達は子供の頃、「1999年末で世界は崩壊する」というノストラダムスの予言を半ば本気で信じていた。それは今で言う「都市伝説」のごとき亡霊だったにしろ、この世界にはそれを上回る恐ろしい事態がいつでも起こりうるし、21世紀には車が空を飛んでもいない。でもだからこそ、私達は三瀬と一緒にこの世界を刮目して眺めていかなくてはならない。

ニュートロン代表 石橋圭吾

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